中小企業にはコンプライアンスチェックが必須!チェックシート項目も紹介

近年、社会全体のコンプライアンス意識の高まりを受け、中小企業においても法令遵守は事業継続の根幹をなす重要な要素となっています。
大企業に比べリソースが限られる中小企業だからこそ、事前のリスク管理と違反の未然防止が不可欠です。
コンプライアンスチェックは、自社の事業活動における法令違反のリスクを洗い出し、適切な対策を講じるための有効な手段となります。
この記事では、中小企業がコンプライアンスチェックを実施する重要性、具体的なチェックシートの項目例、そして効果的な運用方法について解説します。
目次
そもそもコンプライアンスとは?
「コンプライアンス」という言葉は、ビジネスの現場で頻繁に使われるようになりましたが、その意味を正確に理解しているでしょうか。
元々は「遵守」、「応諾」といった意味の言葉のようであるが、日本では概ね「法令遵守」という言葉に訳されて、コーポレートガバナンスの一環である「企業コンプライアンス」の文脈で用いられることが多い。最近では「法令遵守」というのは狭義の「コンプライアンス」であり、むしろ「コンプライアンス」という概念はより広く倫理・道徳や常識といった社会規範に照らしてそれに反する行動をとっていないかという意味合いで用いられることも多くなってきた。 |
出典)国土交通省「『コンプライアンス』について」p.1
コンプライアンスとは、単に法律や条例などの法令を守ることだけを指すのではありません。 それに加えて、社内規程や就業規則といった企業内部のルール、さらには社会規範や企業倫理、顧客や従業員、地域社会といったステークホルダーからの信頼に応えるための社会的責任を果たすことまで、幅広く含まれる概念です。
コンプライアンスチェックの目的を理解しよう
中小企業においては、リソースが限られているため、ともすると法令遵守がおろそかになったり、倫理的な問題に対する意識が希薄になったりするケースも見受けられます。
しかし、コンプライアンス違反は、企業の信頼失墜、事業継続の危機、法的な罰則など、中小企業にとって致命的なダメージを与えかねません。だからこそ、中小企業こそコンプライアンスを重視し、日々の事業活動に根付かせていく必要があるのです。
【チェックリスト】中小企業はどのようなコンプライアンス項目を確認すべき?
日本国内で事業を営む中小企業が、法令遵守および健全な事業運営のために確認すべき主要なコンプライアンス項目を網羅的にまとめました。
コンプライアンス項目 | 内容 |
企業の基本ルール | 会社法商業登記特定事業の許認可 |
職場の基本ルール | 労働時間・賃金労働契約安全衛生ハラスメント防止 |
取引先との契約 | 契約書の作成・締結下請法独占禁止法不正競争防止法 |
債権の管理と回収 | 請求書発行入金確認と遅延への対応債権回収の法的手続き |
消費者とのトラブル回避 | 消費者契約法景品表示法特定商取引法個人情報保護法 |
企業の機密事項と知的財産 | 営業秘密の管理知的財産権の取得・管理情報セキュリティ対策 |
ITリテラシー | 情報セキュリティポリシー不正アクセス対策マルウェア対策データバックアップと復旧ITリテラシー教育 |
各項目を定期的に確認し、必要に応じて改善策を講じることで、法的なリスクを低減し、持続可能な企業成長につなげることが期待できます。
中小企業にコンプライアンスチェックが必要な場面
コンプライアンスチェックは、企業活動における法令、規制、社内規程、倫理規範などの遵守状況を確認し、リスクを未然に防ぐための重要なプロセスです。
以下に、具体的なシチュエーションとチェックのポイントをまとめました。
シチュエーション | チェックのポイント |
新規取引の開始 | 取引先の信用情報、反社との関係、契約内容 |
広告・販促活動 | 景品表示法、特商法、不正競争防止法遵守誇大・虚偽広告、ステルスマーケティング規制著作権・肖像権侵害、個人情報保護法 |
労務管理や人事制度の見直し | 労働関連法規遵守、ハラスメント防止、労働時間管理安全配慮義務の履行状況 |
情報管理やセキュリティ対策 | 個人情報保護法、不正アクセス禁止法等遵守情報管理規程、アクセス権限、漏洩対策、重要情報保護インシデント対応計画、委託先の情報管理体制 |
企業の方針やルールの改定 | コンプライアンス規程、行動規範等の適合性、内部通報制度利益相反取引規程、贈収賄防止、不正競争防止サステナビリティ方針策定 |
これらのシチュエーション以外にも、事業内容の変更、海外進出、M&Aなど、企業を取り巻く環境が変化する際には、あらためてコンプライアンスチェックの必要性を検討することが重要です。
定期的なチェックと見直しを行うことで、企業は持続的な成長と信頼性の向上を図れます。
中小企業が個人とやり取りする際にすべきコンプライアンスチェック
個人事業主に対しても、法人と同様にコンプライアンスチェックを実施することは、取引におけるリスクを低減し、健全なビジネス関係を構築するために非常に重要です。
以下に、個人事業主に対するコンプライアンスチェックの必要性と活用データベース・ツールの例について表にまとめました。
チェック項目 | 必要性 | 活用データベース・ツールの例 |
本人確認(KYC) | なりすましや不正取引の防止 | 公的機関のデータベース照会過去の取引記録 |
反社会的勢力チェック | 企業の信用維持 | リスクデータベース(警察庁、暴力団対策協議会などが提供)新聞記事データベースインターネット検索信用情報機関の反社チェックサービス |
取引の透明性確保 | 法令違反や不正取引への関与防止 | 業界の規制情報過去の判例税務関連法規 |
契約書・合意書の確認 | 将来的な紛争の予防 | 契約書作成支援ツール弁護士によるリーガルチェック |
資金の流れ・支払い方法の確認 | 振り込め詐欺やマネーロンダリングのリスク低減 | 金融機関の提供する取引履歴疑わしい取引のモニタリングシステム |
個人事業主との取引においても、上記のようなコンプライアンスチェックを適切に実施することで、さまざまなリスクを低減し、安全で健全なビジネス関係を構築できます。
取引の規模や内容に応じて、適切なチェック項目と方法を選択し、継続的に実施していくことが重要です。
【事例で学ぶ】コンプライアンスに違反するとどうなる?
企業にとって、コンプライアンス遵守は事業継続の根幹です。しかし、違反事例は後を絶ちません。
ここでは、過去の具体的な事例を通して、コンプライアンス違反が企業にもたらす影響を解説します。事例から学び、コンプライアンス体制強化の重要性を再認識しましょう。
コンプライアンス違反事例①個人情報の私的利用
通信会社の代理店スタッフが、業務で得た顧客の個人情報を私的に利用し、SNSで連絡を取った事例があります。
これは個人情報保護法に違反する可能性のある行為であり、顧客のプライバシー侵害、ひいては企業イメージの失墜につながります。
防止策:
- スタッフへのコンプライアンス研修の徹底
- 個人情報取り扱いに関する明確なルール策定と周知
- 定期的な監査による不正の早期発見
- 顧客情報へのアクセス権限の厳格化
同じような事例を防ぐには、これらの防止策を徹底する必要があります。
コンプライアンス違反事例②違法な残業の強要
広告代理店が社員に労使協定を超える違法な時間外労働をさせたとして、労働基準法違反で罰金50万円の判決を受けた事例があります。
長時間労働が常態化し、過労自殺という重大な結果を招いたことが指摘されました。
防止策:
- 労使協定遵守の徹底
- 残業時間管理の厳格化
- 長時間労働を是正する企業文化の醸成
- 業務効率化による労働時間短縮
- 人員配置の見直し
- 管理職の意識改革
- 従業員が安心して相談できる体制づくり
これらの防止策を行うことで、労働関係のコンプライアンス違反を防げます。
コンプライアンス違反事例③SNSでの炎上
玩具メーカーの公式SNSが、不適切なハッシュタグに便乗した販促投稿で、多くのユーザーに不快感を与えた事例がありました。
企業の公式アカウントとして、社会的なモラルや倫理観に欠けた表現は、コンプライアンスに緩い企業であるというイメージにつながります。
防止策:
- SNS運用ポリシーの明確化
- 担当者への倫理教育の徹底
- 投稿内容の複数チェック体制の構築
SNSでの炎上が増えている状況を考え、プロに運用を任せる、あらかじめ弁護士などの専門家に相談するというのも一つの方法です。
コンプライアンスチェックはどう実践すべき?
コンプライアンスの範囲は多岐にわたり、組織全体で徹底するには具体的な方法論が必要です。
ここでは、コンプライアンスチェックを効果的に実践するための二つの主要なアプローチ、「チェックシートの活用」と「ITツールの活用」について解説します。
コンプライアンスチェックシートを活用する
コンプライアンスのチェックシートは、単なる確認ツールとしてだけでなく、従業員のコンプライアンス意識の向上、潜在的なリスクの早期発見、組織全体のコンプライアンスレベルの底上げに貢献します。
定期的なチェックと記録を通じて、問題点の可視化や改善策の検討を促す役割も担うのです。
チェックシートを用いたコンプライアンスチェックの実務フローは、一般的に以下のようになります。
1.コンプライアンスのチェック項目設定
関連する法令、業界の規制、社内規程などを洗い出し、具体的なコンプライアンスに関するチェック項目をリスト化します。
厚生労働省が提供する「職場のコンプライアンス・チェックシート」 は、労働関連法規に関するチェック項目が網羅されており、参考にできます。
ぜひ、以下をチェックしてみてください。
参考)厚生労働省「職場のコンプライアンス・チェックシート」
自社の事業内容やリスクに合わせて項目を追加・修正しましょう。
2.コンプライアンスチェックシートの配布・実施
作成したチェックシートを、関連する部門や従業員に配布し、定期的に自己点検を実施してもらいます。実施頻度は、業務の性質やリスクの度合いに応じて決定します。
3.結果の回収・集計
回収したコンプライアンスチェックシートの結果を集計し、コンプライアンス違反の疑いがある項目や、注意が必要な項目を特定します。
4.分析・評価
集計結果を分析し、組織全体のコンプライアンス状況を評価します。特定の部門や業務プロセスに課題が見られる場合は、その原因を特定します。
5.改善策の実施
分析結果に基づき、コンプライアンス違反のリスクを低減するための具体的な改善策を策定し、実行します。
6.フォローアップ
改善策の実施状況を定期的に確認し、効果測定を行います。必要に応じて、コンプライアンスのチェック項目見直しや改善策の再検討を行います。
ITツールを活用する
近年、コンプライアンスチェックの効率化と高度化を図るために、さまざまなITツールが登場しています。
これらのツールは、煩雑なチェック作業の自動化、記録の一元管理、リスク分析の高度化などを実現し、より効果的なコンプライアンス体制の構築を支援します。
ITツールの種類 | 内容 |
コンプライアンス管理システム | 組織全体のコンプライアンス状況を一元的に管理 |
eラーニングシステム | 組織全体のコンプライアンス意識向上に貢献 |
内部監査支援ツール | 内部監査の質と効率を高める |
リスク管理プラットフォーム | さまざまなリスクを統合的に管理 |
契約管理システム | 契約関連のリスクを低減 |
ITツールの導入は、初期コストや運用体制の構築が必要となりますが、長期的な視点で見ると、多くのメリットをもたらします。
自社の規模、業種、コンプライアンス体制の現状などを考慮し、最適なITツールを選択・導入することが重要です。
コンプライアンスチェックを中小企業で定着させるには?
コンプライアンスチェックを定着させるには、以下のような効果的な施策が重要です。それぞれの施策についてポイントを絞って解説します。
経営層がコンプライアンスの重要性を発信する
- 具体性と継続性
- 行動による模範
- 双方向のコミュニケーション
経営層は、具体的な事例や社会情勢を基にコンプライアンスの重要性を深く伝え、継続的に発信することが不可欠です。
また、自ら法令遵守の姿勢を示し、従業員との対話を通じて理解を深めることで、組織全体のコンプライアンス意識が向上します。
定期的なコンプライアンス研修を実施する
- 対象者と内容の最適化
- 参加型の研修
- 最新情報の反映と事例の活用
- 研修効果の測定
全従業員向けコンプライアンス基礎研修に加え、役職・業務に応じた専門研修で実効性を向上させます。一方的な講義でなく、グループワーク等で主体的な参加と理解・実践力を促進することも重要です。
法改正や社会情勢に合わせ研修内容を定期見直し、最新情報や事例共有で危機意識を高めるほか、研修効果測定・分析で内容改善を図ることが求められます。
コンプライアンスチェックリストを活用する
- 網羅性と実用性
- 定期的な見直しと改善
- 運用状況のモニタリング
- ITツールの活用
コンプライアンスのチェック項目は、関連法規と社内規程を網羅しつつ、現場の業務実態に即した具体的な内容にする必要があります。
また、法改正や事業環境の変化に合わせて、チェックリストの内容を定期的に見直し、必要に応じて修正・改善を行うことが重要です。
コンプライアンスチェックリストの作成・管理、実施状況のモニタリングには、ITツールの導入も有効です。
内部通報制度を整備して違反リスクを早期発見する
- 通報しやすい環境づくり
- 迅速かつ適切な調査と対応
- 通報者へのフィードバック
- 制度の周知徹底
通報者の匿名性を確保し、不利益な扱いを受けない保証が、制度利用促進に最も重要です。
電話、メール、書面、Webフォーム等、複数の通報手段を用意し、コンプライアンスに関する通報があった際は、迅速かつ公平な調査で事実関係を正確に把握して適切な是正措置と再発防止策を講じます。
制度の目的、利用方法、通報者保護について、従業員へ周知徹底することも重要です。
コンプライアンス責任者を明確にした上でチェック体制を構築する
- 権限と責任の明確化
- 独立性の確保
- 適切なリソースの配備
- 部門間の連携強化
- 外部専門家との連携
コンプライアンス責任者には、体制構築、運用、監視、改善に関する明確な権限と責任を与える必要があります。業務執行部門から一定の独立性を保ち、客観的なチェックが可能な体制が望ましいと言えます。
役割遂行に必要な人員、予算、情報などを適切に配備するほか、法務、人事、監査部門等と緊密に連携し、情報共有と協力体制を構築することが重要です。必要に応じて、外部専門家の知見を活用し、コンプライアンスチェック体制の精度を高めます。
これらの施策を組み合わせ、組織の状況に合わせて適切に実施していくことで、より実効性の高いコンプライアンス体制を構築し、持続的な企業価値の向上につなげることが期待できます。
まとめ
この記事では、中小企業におけるコンプライアンスチェックの重要性とその具体的なステップについて解説しました。
リソースが限られた中小企業にとって、事前のリスク管理は事業を守る上で不可欠であり、コンプライアンスチェックはそのための有効な手段です。
コンプライアンスのチェックシートを活用し、定期的な見直しと改善を行うことで、法令違反のリスクを最小限に抑え、健全な企業運営を実現できます。
コンプライアンス体制の構築は、単なるコストではなく、企業価値を高める投資です。今日からコンプライアンスチェックに取り組み、未来に向けて盤石な企業基盤を築き上げていきましょう。
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